先日行われた「求められるQAエンジニア」とは ‐ いとうよしきさん、tsuemuraさんに聞くキャリアの歩み方 - connpassにて以下質問をいただき、その場のQ&Aタイムでも触れはしたのですがちゃんとした回答はできていなかったと思うので、ここでお答えしたいと思います。
このほかにも、時間の関係でお答えしきれなかった質問については順次回答を記事化していきます。(ブログネタになるので大変ありがたい・・・
第三者検証会社でのアサインについて
現在、第三者検証の企業で働いていますが、ゆくゆくはプロセス改善や要件定義への関与へチャレンジしてみたいですやってみたい領域の業務にチャレンジできるかの確証がない場合において、今の業務で成果を出し、会社の上司へチャレンジしたいことを発信するのが最短ルートになるのでしょうか。
現在、第三者検証のテスター経験しかない状況です。アサイン案件の要望が通らない場合、足りないスキルや経験をどのように身につけると良いでしょうか?
けっこう似ている質問なのでまとめてお答えしたいと思います。
※もちろん所属企業や状況、担当案件やドメインなどによって異なりますし、そのあたりの詳細を知らない状態でのお答えになります。
まず私自身、過去第三者検証会社と言っていた(最近は各社さんそうは言っていないと思いますが)企業に勤めていたので、案件アサイン事情などは理解しているつもりです。実際「ここだと辛いので違う現場に行かせてほしい」など直訴したこともありました・・・そのときは若さゆえの云々な面もありましたが。
さておき、まず上記質問を単純化すると、**第三者検証会社で希望の(業務経験が積める)案件に移るにはどうすればいい?**だと捉えました。もし違ったら何らかの方法で教えてください。
第三者検証会社が、特定の案件に入っているとある個人を他の案件に移す場合の理屈
希望の案件に移るには?を考えるうえでは、第三者検証会社が、特定の案件に入っているとある個人を他の案件に移す場合のメカニズム・・・というと大げさですね。どのような判断がなされて移すのかを理解する必要があります。
第三者検証会社のビジネスモデルをざっくりいうと、所属するテスト・QAエンジニアを人月*万円、で他社の業務に従事させて対価をもらう、というものです。じゃあ、会社がある個人を別の案件に移すのはどのようなときか。
ひとつは、案件が無くなったり減員となった場合です。例えばA社に4名がアサインされていたとして、会社間の契約自体が終了となり、4人全員が撤退してくることもありますし、3名に減員になって1名リリース、といったこともあります。こういった場合、リリース対象になった人は他の案件に移さなければいけません。案件にアサインできない(=待機状態)だと利益を上げずに人件費だけかかる状態になるので、会社としては好ましくないからです。
他には、人を他の案件に移したほうが利益が上がる場合、があります。 たとえばA社の案件に100万円/月の佐藤さんがいたとして、佐藤さんはテスト自動化がとても得意だったとします。A社とは別のB社が「第三者検証会社さん、自動化したいんでいい人よこしてくださいよ〜。単価150万/月出せるので!」と言ってきた場合、所属企業としては佐藤さんをA社案件からB社案件に移せば、月の売上が50万上がるわけです。もちろん代わりを入れる必要もありますが。
これと似たような形で、例えば経歴5年のQAエンジニアを今の案件から抜いて代わりに2年目を入れ、けれども単価は据え置き、にしておけば、5年目よりも2年目のほうが人件費が安い事が多いので、そのぶん少しですが利益率を高められる、といったことも行われています。
で、今回の本題である「行きたい案件にアサインされるには」ですが、上記の「第三者検証会社のリクツ」から考えると、あなたを希望の案件にアサインすると売上や利益が向上する、という状況を作るのが素直な方法です。
そのためには、例えば
- テストプロセス全体ができます
- プロセス改善ができます
- 自動化できます
- 会計ドメインに詳しいです
など、何かしら良い単価につながる、良い単価で営業さんが売れるだけのネタが要るわけです。
経験がないvs案件に入らなければ経験できない
質問者の方々は第三者検証会社にお勤めとのことなので、ここまでのことは「知っとるわ!」かもしれません。すみません一応知らない方にも向けて書きたかったので、あえて丁寧目に書きました。
希望する案件にアサインされるには、単価UPのネタ、すなわち希望するアサイン先で求められる経験やスキルが必要です。しかし、質問してくださったお二方に共通するのは「アサイン先で求められる経験やスキルを今時点では持っていない」ということ、のように見えます。
こうなると、卵が先か鶏が先かという話で、このような「実務経験がないから案件に入れない、案件に入れないから実務経験が積めない」の無限ループにハマっている話はよく聞きます。
このループを断ち切るのは簡単ではない、のですが、方法は無くはないと思っています。
まず、「実務経験がない」を「実務経験がある」に変えるのは困難です。実務をできるかどうかは自力でコントロールできない可能性が高いため、です。副業でやるとか、転職するとか、そういった方法での実務経験は可能かもしれませんが、おそらく期待されている答えはそこではないので、今回は除外します。
結果的に、ループの断ち切り方は一つに絞られます。「経験はないけど案件に入れてもらう」方向で頑張るしかありません。
経験がないけど案件に入れてもらう、には、自社の営業やその先に居る顧客に対して経験はないけどやればできそうだなと思ってもらう必要があります。そのための説得材料を用意する方向で、努力をするのが良いでしょう。
経験はないけどやれそう、と思ってもらう材料を揃えるには
これは対象によって多少変わってきます。
たとえば、テスト自動化であればわりとやりやすい部分もあって、自動テストシステムのプロトタイプやサンプルを作ってGitHubあたりで公開するのも一つです。成果物があると「なるほどこのくらいできるのね。じゃあやっていけるかもね。」と思ってもらいやすいですよね。
一方、ひとつめの質問にあったような、プロセス改善のスキルや要件定義のスキルは、テスト自動化などに比べると成果物でスキルを示すのが難しい部分もあると思います。このような対象では、私だったら以下のようなものを説得材料として用意すると思います。
- 資格を取る
- 例えばスクラムやってる現場に入りたい、という希望があるなら、スクラムマスター取っておいたほうが可能性が上がる等
- 読書会や勉強会などを社内で主催し、講師をやる
- その分野の知識が身につく
- 経験者が参加してくれれば、実務の話を直接聞ける
- 回数を重ねると、社内の営業さんからも「あのひとよく勉強会開いてるしイケるんじゃない?」と思ってもらえる
- し、対顧客でも「このエンジニアは社内でも研修講師をやっているくらい詳しいんですよ〜」と売り込める
とくに講師をやるのは良いように思います。興味関心がある、とアピールできますし、実力にも繋がります。
上記2つの説得材料は、自分自身でコントロールできる部分が大きいのがポイントです。もちろん「講師をやれば希望の案件に絶対入れます!」とはお約束できませんが、自力でコントロールできる範囲で可能性を高めるのは、このような方法かなと思います。
おまけ
あとは、社内ですでに業務経験のあるエンジニアからどう見られているか、的な部分も実は効いてきたりします。というのも、私も自動化エヴァンジェリストのしごとをしていたときによくあったのが、社内の営業さんから「いま***社から***してほしいという案件が来ているんだけど、たとえば***さんとかってこのへん対応できますかね?ハードル高いかな?」等の質問をちょこちょこ受けていたんですね。なので、自分の知らないところで誰かが「大丈夫そうですよ、任せてみましょうよ」と言ってくれるような状況に持っていく、というのも大事です。
と書いていて気がついたのですが、上で書いたように社内研修とか積極的に開いていると社内のコネクションもできてきて、単純接触効果で「あの人いいっすよ」とオススメしてもらえる確率も上がりますね。
結局仕事は人だ・・・
以上、参考になれば幸いです。