自分のObsidianの中身をランダムにめくって見ていたところ、本書の読書メモが出てきて「すごく良いこと書いてあったな・・・」と思い出し、再読しました。

以前「求められるQAエンジニア」とは ‐ いとうよしきさん、tsuemuraさんに聞くキャリアの歩み方 - connpassで発表したときに本の選び方について聞かれて「自身の感覚で選んで、精度を上げていくべき」といった回答をしました。が、「わがSE人生に一片の悔いなし読んで」でも良かった気がしてきますね。

内容

著者の清水さんについてはソフトウェアエンジニアのためのホームページ Presented by System Creates Inc.をご覧ください。

  • 『要求を仕様化する技術』
  • XDDP
  • USDM

など、きっとどこかで聞いた・触れたことのあるはずです。

そんな清水さんはSEとしてキャリアをスタートさせたのち「向いていない」と感じてソフトウェア開発を離れ、そして1年後に戻ってきたそうです。その時の動機や、戻るという決断をするに至った経緯なども書かれています。そうした「挫折をするも復帰し、活躍」と歩む中での、主にITエンジニアとして(本書中は基本的にSEと表現されていますが)のマインドセットについて書かれた本です。

Image from Gyazo

上の画像を見ていただくとわかるように、かなり薄めの新書です。が、かなり付箋ポイントがありました。これは付箋が足りてなくて、実際には倍くらい貼りたいポイントがあります。

刺さったポイント

プロとしての姿勢

2000年代の本なので特にその傾向があったと思われますが、SEという仕事について不誠実な人や行為がある、と述べられています。具体的には、顧客の要求を「はいはい」と聞いてその通りに作り、あとから「それは仕様変更ですね~」といって改修費用をもらうような仕事ぶりなどを指しています。このような行為を「品格がない」「恥」と断じていて、反対にきちんと顧客に向き合って要求仕様を考えるような振る舞いを是としています。

清水さんの思う「プロの姿勢」として、以下3つが挙げられています。

  • 約束できること
  • 要求に合わせてプロセスを自在に変化させること
  • 人間的に信用できること

これらは仕事にこなれた頃に忘れがちだったり、長く同じ現場や会社にいるとそこでの思想に染まってしまい場合によってはプロフェッショナリズムをなくしかけたりもするので、折に触れて読み返したいところです。

努力

努力に関する点は、特に以下の2箇所がグッときました。

弟子が、孔子に「先生の教えはとてもありがたいものですが、私にはとてもそこまでできる能力がありません」と言ったのに対して、孔子は「能力が足りない者は道の半ばで倒れるものだ。お前はやりもしないで自分の能力を画っているではないか」と喝破した場面です。

これは本当に自分もやりがちで、本気でやってないうちから「能力が足りない」と思ってしまいます。まずやれ、ですね。

不足するものが多いと判断したときは、たとえば1,2年間、自分の持ち時間のすべてを投入してでも、必要な知識や技術を短期間で習得することです。

自分は今37歳ですが、特にもっと若い方だと、「1,2年間」というスパンをなにか技術や知識の習得に注ぎ込もうという発想にはならないのではないかな、と思うんですよね。本書が書かれた当時と比べると物事の移り変わりが早すぎる、という事情はあるにせよ「1,2年やる」という選択は、実はもっとやってもいいんだろうな・・・と、再読した今回感じました。

関連する話として、若い時ほどじっくり時間かけて身につけた基礎・土台がペイしやすいという趣旨のことも書かれており、むしろ若者のほうがまとまった時間をつぎ込むインセンティブがありそうですね。

自分はもう若くはないですが、「あれもこれも広く浅く」というスタンスになりがちなので、狭く・集中する発想要るよなと改めて気付かされました。

若い人に読んでほしい気持ちもありつつ、ちょっとしばらく元気なくなってきた中堅に一番刺さりそう

この本は「書いてあるとおりにやると仕事が捗る」的なハウツーではなく、冒頭で書いたようにマインドセットが書かれた本です。なので、読むことで「やるぞ」という気持ちが得られます。薄しですし、説教臭くないというか「オレのようにやれば成功する」という現代のビジネス書スタンスとはまた違うので、かなり読みやすいのではないかなと思います。

JaSST'25Tokyoの招待講演、 「真の学び」が未来を拓く~成長するエンジニアのマインドセット ~ が好きだった人はたぶん本書も好きです。

参照:JaSST'25 Tokyo 2日目に参加したセッションと感想 - テストウフ

本書のようなマインドセット本、20代の若者とかに読んでほしくなるんですけど、一方本当に意味が理解できて刺さるのは、なにかしらキャリアの中で後悔や悩みがあったり停滞感が出てきたあたりの人なんでしょうね・・・。

あと惜しいのが、新品が手に入りづらく、Amazonだとプレミア価格の中古になる点。ブックオフとかで探してみてほしいです。