帯に「上司はなぜ無能なのか?」とか書いてあってキャッチーすぎるのですが、むしろ本で言っていることの本質はそこではなく、「一生モノの思考法」のところでした。
本書にかかれているのは、さまざまなものごと(仕事や恋愛や親子関係などなど)に対して"経営"の切り口で考えるべし、という話です。
もう序文のところの引用2箇所がほぼ全てなのですが、
本来の経営は「価値創造(=他者と自分を同時に幸せにすること) という究極の目的に向かい、中間目標と手段の本質・意義・有効性を問い直し、究極の目的の実現を妨げる対立を解消して、豊かな共同体を創り上げること」だ。この経営概念の下では誰もが人生を経営する当事者となる。
本書の主張は単純明快である。①本当は誰もが人生を経営しているのにそれに気付く人は少ない。②誤った経営概念によって人生に不条理と不合理がもたらされ続けている。③誰もが本来の経営概念に立ち返らないと個人も社会も豊かになれない。
です。要するに著者の思う「経営的考え方」という武器・道具を渡してくれるようなそんな本ですね。今っぽく言うと「メンタルモデル」かも。
おもしろポイントは多々あるのですが、「究極の目的に向か」うために一見相反する考え方や行為を両立させることもある、というのがその一つでした。
本当は、親子関係においても経営をおこなうべきだ。 具体的には、「A:親が子の生き方を決めつけてしまう」「B:親が子の生き方を決めつけない」という対立の究極の目的が「C:子供に幸せになって欲しい」というものだとすれば、AとBがそれぞれCにどう寄与できるかを考えてみるべきである。
というところは、例は親子関係ですが、エンジニアとして仕事をしている中でも適用できる場面が実はたくさんあるように感じました。
エンジニアあるあるかもしれませんが、わりと手段のほうに意識が向きがちで、そうなると一見対立する2つのことに対して「どちらの手段にするか」と考えることが多いです。そのような場面で本書で言うところの経営的な考え方、つまり「大元の目的はなんだっけ」を常に考えることができるようになると、よりよい判断ができるようになるのではないかと思います。
上で書いたところ以外にも、仕事や勉強などさまざまなことに経営的切り口を持ち込んで語られていて、かつそれらが(親子関係とかは特にそう)自分事が多いんですよね。なので、私はKindleで読んだのですが、ハイライトがかなり多くなりました。紙だったら付箋かなり貼っていたと思います。
ジョークっぽい言い回しが多用されていたり、文体という面では割と好き嫌いが分かれると思います。私は嫌じゃないのでスラッと読めましたが、「文体とか口調とかけっこう気になるんだよね」という方はサンプル読んだり立ち読みしたりして合う・合わないを判断してから買うのがオススメです。