先日、勢いに任せて以下のようなツイートをしました。

よそ様のあれこれに口を挟むのも良くないとは思いつつも、どうしてもいいたくなったので、補足というか思いをブログに書きなぐっておこうと思います。 おそらく「それは違うぞ」的な部分もあると思うので、ぜひTwitter等でお知らせください。

第三者検証会社とは

この手の話をするにあたっては前提を合わせなければいけないので、まずは第三者検証会社とはなんぞや、について私の認識しているところを書きます。 私も今の会社に転職してから開発者と話をしていて、「テスト会社や第三者検証会社って何?」という方がいると知りました。関わることが無ければ、それはそうですよね。

第三者検証会社とは、自社で開発しているサービスやプロダクトを検証するのではなく、サービスやプロダクトを開発している会社から検証業務を請け負うビジネスをやっている会社のことです。 検証やテストという業務に関して「作った人や会社の内部で行うのではなく、他社の専門家が第三者的な視点で指摘をすることが価値になって云々・・・」ということで、「第三者」として「検証」業務を行う会社、第三者検証会社と呼ばれる業態が存在します。 最近では「テスト会社」と呼ぶことも多いと思います。

現状、第三者検証会社の多くは、開発を行っている会社に自社のエンジニアを送り、派遣契約か請負契約かで1人月おいくら、的な形でのビジネスです。元請けテスト会社と孫請けテスト会社と、などまさに開発者のSESと同じような形です。

第三者検証会社に対するイメージ

ここからがだんだんと本題に入っていくところですが、第三者検証会社やそこで働くテスト・QAエンジニアに対して、どうも偏ったイメージを持っている方がいるみたいです。

これは、本記事の最初に貼ったツイートで言及しているように、採用周りで特に見られます。 自社開発をしている企業のQAエンジニア募集の文面の中で、「弊社では第三者検証会社のような動き方ではなく自立したQAとしての働き方を求めています。」といったことが平気で書かれています。 これを、文脈を補ってもう少し詳細に説明すると、 ”第三者検証会社のQAエンジニアは受動的である、言われたことをやるという働き方である” という意味合いのようです。(他にもあるかもしれません。教えてください。)

どうもこれが一部での第三者検証会社のイメージのようで、この点に対してわざわざこの数千文字の文章で「それはちがうぞ」と言いたくなってしまったわけです。 過去の転職活動において「第三者検証会社に勤めていること=悪、劣っている」のような言い方をされたことがあり、ただネット上の記事を見たというレベルでなく実体験としてそういう見られ方をしました。

※このときは人事の方に「そういうことをおっしゃっていると、御社への転職意欲がなくなるQAも居ると思いますよ」とお伝えしました。個人的にはコミュニティの仲間にもJoinをおすすめしない対象になっています。

私の考える、実際のところ

で、ここからが言いたいことでして、第三者検証会社のQAエンジニアは受動的だったり言われたことしかやらんというのは間違いでは?と思っています。もちろん受動的な人や、言われたことしかやらない人も存在しますが、そこと所属している会社のビジネスモデルとはそんなに関係ないんじゃないかな、と感じています。

主体的な人もたくさんいる

まずここから。きっかけになった(そして自分も直接言われた)「第三者検証会社のような受動的な動き方ではなく~」という点は誤りです。主体的なQA・テストエンジニアも多数います。というかそうでないとやっていけないです。

第三者検証会社のQAエンジニアが自社で評価をされるポイントのひとつに、売上貢献があります。もちろんこれが全てではありませんが、「常駐先の体制を拡大して、売上を増やした」という結果が出せると、それは評価されます。

ということは、QAエンジニアは言われたQA業務をこなしているだけでは自社の評価はそれほど上がらず、QA業務に加えて顧客への積極的な提案が必要になります。

この提案というのは、基本的には以下の理屈です。

  • 顧客の開発・QA体制の中で課題がある
  • その課題を解消するためには、今いるメンバーだけではパワーが足りないので、人を増やして対応すべきだ

確かにこういう提案をすると顧客から苦い顔をされたりもするわけですが・・・ただ嘘の課題をでっちあげることはありません。本当に「対応したほうがよい」と思っているところに対して増員の提案をします。

もちろん「とにかく増員!」という提案をするわけではなく、まずは今いる(自社以外も含めた)体制でできそうな取り組みを提案しつつ、それでも足りない、あるいはスピーディに解決したいというニーズがあった場合に体制強化はどうですか?と伝えることになります。

なので、基本的に第三者検証会社のエンジニアで、顧客のところでリーダーポジションに居るような人は主体的だと思います。

そもそも第三者検証会社、と名乗らなくなった

2015年とかそのくらいから(※時期はうろおぼえです)かなと思うのですが、過去「第三者検証会社」を自称していた各社さん、既に第三者検証会社とは言っていないところが多いです。(公式サイト見てみてください)

つまり、各社さんのビジネスのやり方や打ち出し方が、「開発とは別の第三者の目で検証します!」では無くなっている、ということです。おそらく「受け身」と感じるポイントはこの「第三者」としての動きが理由だと思うのですが、もうそういう動きをしてない会社も多いはずなんですよね。

いま「テスト会社」と呼ばれるような、以前第三者検証と自称していた会社さんは、第三者として検証業務を受託するスタンスではなく、むしろ開発の中になるべく入り込んで、当事者として「どうやったら品質上がりますかねー」を一緒に考えて実行するような存在になっているはずです。少なくともそうなろうとしているはずです。

ではなぜ受け身に見えてしまうのか

「第三者検証会社は受け身だ!」とおっしゃる方は、上記の話に納得いかないかもしれません。 「みんな受け身だ」と思うに至るには、複数名が受け身だった経験があるはずです。

これはあくまでも仮説ですが、その方がテスト会社(以降は「第三者検証会社」でなくテスト会社と言うことにします)のエンジニアと接した環境が以下のいずれかだったんじゃないかな・・・と思っています。

安い単価で依頼した

もしかしたらここが根本では・・・と思っています。QAエンジニアやテストエンジニアを依頼するのに、提示単価が安かった可能性があるのではないでしょうか。

実際に私もテスト会社にいて体験したことがありますが、稀に「そんなの新卒でも無理ですよ」というような安い単価で依頼をしてこられる会社もあります。

テスト会社としては安い単価はお断りするか、どうしてもということであれば低単価でも最低限の利益が確保できるエンジニア、すなわち経験が浅いエンジニアに仕事をしてもらうことになります。

そうなると、業務に向かう姿勢が受け身だったり、あるいは気持ちの上では主体的だけれども経験が浅いがゆえに立ち回り方がわからないようなエンジニアが来る可能性が上がります。

もしかすると、こういった「低単価で依頼して来てくれたエンジニア」を見て全体がそうだと勘違いされたのでは・・・と思います。

情報を絞った

これもテスト会社のエンジニアあるあるかもしれませんが、正社員としてではなく社外の人間としてプロジェクトに関わることになるので、得られる情報が絞られることがあります。

QAエンジニアがサービスやプロダクトの品質を考えるうえでは情報命なので、インプットが絞られた状態でそれでも品質について考えろと言われるとなかなか厳しい面もあります。

ただ、この点についてはテスト会社の中でもすれ違いが起こりやすくて、「主体的に動けばいくらでも情報は集まるはずだ」派と「第三者的な、企業間の壁がどうしてもあって、動きたいように動けない」派との両方が居るように見えます。おそらく経験したプロジェクトや、その時点での立場などが異なるがゆえに発生しているすれ違いです。

現場メンバーが「客先のプロジェクトで壁を感じる、動きたいように動けない」と悩んでいるところに、上司や中途入社の人が「事業会社だからといって壁が無いわけではない、条件は一緒だ。(だから君が動き方を工夫すればいい話だ)」と意見を言い、メンバーがつらくなって辞めるパターンがよく起こります。

閑話休題です。

テスト会社に仕事を依頼している側が、QAエンジニアが主体的に活動するに十分な情報を与えなかったり、あるいは情報は渡すけれども時間がかかりすぎたりしていることで、結果的にQAエンジニアがあまり動けず「受け身のように見えてしまう」場合もあるように思います。

翻ってテスト会社のQAエンジニアはどうすればいいか

この記事の発端は「第三者検証会社のQAだからって受け身だと勝手に決めつけたらいかんよ」という思いからでした。 が、そのように思ってくる事業会社の開発部門の人も少なからず居る、というのも事実です。

そうした状況において、「あいつらはわかってない!」とブログ記事でお気持ち表明しているだけでは何も解決しません。なので、QAエンジニアの側からもアクションを起こしていかなければならないと思っています。特に転職したい人は。本音は「勤務先のビジネスで差別するようなやつの会社になんて入らなくていいですよ」なのですが、悪いイメージは払拭したほうがいいので・・・。

ということで、個人ができることとしては「主体的に動けますよということを示していく」しかないんじゃないかと思っています。 業務でこんなこと考えてこんなことしましたエピソードであったり、社外のコミュニティ活動なんかも外部からみて主体性のひとつの参考になります。(※コミュニティ活動をしていれば仕事ができるわけではない前提で)

「ITエンジニアの転職活動は転職する気がないうちから」の本当の意味 - Tech Team Journalにも近いことを書いたのですが、職務経歴書などの書類上で自身を伝えるのには限界があります。

常日頃から、いろんなところで自分の考えや経験などをアウトプットして蓄積しておくことで、他者から「この人はこういう考え方で、こんなスキルを持ってるんだな」と理解してもらいやすくなります。その積み重ねがあれば、「第三者検証会社だけど」この人は良いぞ、って思ってもらえるんじゃないでしょうか。で、それを多くの人がやっていくことで、受け身だ等の謎レッテルが少しは減るんじゃないでしょうか。