このブログでは、基本的にソフトウェア開発の本やエンジニアリングに関する本について紹介しています。
今回ご紹介したいのが、ファインルファンタジー14のプロデューサー兼ディレクターである吉田直樹氏のコラムをまとめた本『吉田の日々赤裸々。』です。
と、これだけ聞くとソフトウェアもエンジニアリングも関係なさそうな感じがするのですが、私はこの本を「顧客にサービスを提供する」視点を持つ/持とうとしているソフトウェアエンジニア・QAの人に読んでもらいたいな、と思っています。
前代未聞の作り直し
帯の裏に書いてある、この「前代未聞の作り直し」というのがポイント。
FF14はオンラインゲームなのですが、2010年にサービス開始した直後「出来が悪すぎる」ということで大炎上しました。これが開発のスクウェア・エニックスでも問題となり、結果的に体制を刷新。そのときにプロデューサ兼ディレクターに抜擢されたのが、本書の吉田直樹氏でした。
この本では、連載コラムなので話が脇道にそれる回がありつつも、全体で「どのようにFF14を復活させていったのか」が書かれています。
ざっくり言ってしまうと、出来が悪く問題となったFF14をゲーム内の世界ごと一度「終わり」を迎えさせて、新たに新生FF14をスタートさせる、というものです。
私は、この過程から「顧客のことを考えるとはどういうことか」「失敗したプロジェクトをどうリカバリしていくのか」という、エンジニア目線での学びが多く得られたと思っています。
まずは現状把握から
旧FF14においては、内部の人間が「この品質ではちょっとまずいかも」ということを感じつつも、ゲームのサービス開始に向けてプロモーションをうったり等準備が進んでしまっていて、止めることができなかった、というエピソードも触れられています。
そんな時にディレクターとなった吉田氏は、
理想ー現状=問題
そして
“いったい何が起きているのか”を最初に絞り込もうとしました
のように、現状把握から始めたそうです。
大きなサービスの作り直しほどの規模ではないとはいえ、ソフトウェア開発に関わっていると様々なトラブルに見舞われて、余裕がなくなってしまう場面も多いです。
そんなときに、思い切って立ち止まり「今どうなっているのか」を把握する。これは勇気が要ることながら、絶対に必要だなと。『カイゼンジャーニー』では「むきなおり」として出てきたポイントですね。
サービスが起動にのってからの話も面白い
オンラインゲームを作り直して新生させる、という大きなプロジェクトがうまくいってからも、サービスは「継続的に利用してもらう」「新しいパッチを出す」というフェーズに入っていきます。つまり「ユーザーに継続的に価値を届けて、自分たちも儲かる」ですね。
この辺の話も、私が経験したことがない「自社サービスをどう届けていくか」の話なので、個人的には興味持って読めました。
自分たちでサービス提供するお仕事の方だと、もしかしたら普段体験しているようなことかも。
ということで、もしゲームが嫌いでなければ、この『吉田の日々赤裸々。』を読んで、サービスを一度クローズさせて新生するまでの流れを追体験してみると、色々学びがあると思います!