カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで

良い本だ、という評判は聞いていたのですが、本当にいい本でした。

ストーリーのある本で、読み終わった感覚はハリウッド映画を見終わったような感覚です。最後にアベンジャーズが集まってきて地球が救われたようなそんな感じ。

・・・というコメントだと良さが伝わらないので、ポイントかいつまんで整理。

本書のポイント

実際に役に立つであろうアジャイルのプラクティスなどは数多く出てくるので、「カイゼンジャーニーのココがすごく良い」という点をご紹介。

実際に直面しそうな壁を超えている

ソフトウェア開発の現場を良くしていくための方法が書かれた本は数多くありますが、本書の特徴としては「実際に改善していく場合にぶちあたりそうな壁が沢山でてくる」ところだと思います。

「このままではよくない」と思って改善を始めようとするものの、周りの理解が得られず・・・というのは、ソフトウェア開発ではよくあることだと思います。本書の主人公もそうで、最初は自分一人からスタートして、少しずつ周りの仲間と取り組むことができるようになって、でも問題は新たにドンドン発生して・・・という流れで話が進んでいきます。

そのため、読んでいる側が感情移入しやすく、「自分もこんな経験あるなぁ」とか「あー、いるいる、こういう厄介な上司や客。どうやって乗り越えるんだろう・・・」と、時にワクワクし、時に胃が痛くなりながら読めます。その分、自分が実際に何か取り入れてやってみようというときに、本書を読み返して参考にすると、主人公が先につまづいてくれている分、自分の成功率が上がるだろうと思います。

読みやすさに対して考え方やプラクティスのボリュームがすごい

表紙にも

  • モブプログラミング
  • バリューストリームマッピング
  • ユーザーストーリーマッピング
  • 仮説キャンバス
  • ハンガーフライト
  • リーダーズインテグレーション
  • ファイブフィンガー
  • カンバン

etc、と書いてあるのですが、たぶん上に挙げたものは本書全体の1割くらいなんじゃないでしょうか。細かく数えていない(数え切れないくらい載っている)ので正確にいくつ、とはいえなくて申し訳ないのですが、とにかく多い。

【2018/4/30 追記】

巻末の一覧表でプラクティスを数えたら、全部で60ありました。 でも、プラクティスと呼べるようなものは他にもコラム内などに散在しており、体感だともっと多いです・・・!

【追記おわり】

本書に載っているプラクティスなどを全部取り入れるのは無理ですし、おそらく著者もそれは想定していません。

外から得られた学びを、そのまま自分たちの現場や仕事で適用しようとしても、たいていうまくいかない。自分たちの「状況」に照らし合わせてみることが必要だ。

という文が出てきますが、まさに。

ストーリーに沿って1度読んだあとは、本書は「チームをもっと良くするためのカタログ」となってくれるでしょう。

主人公(と読者)への大きな問い

それで、あなたは何をしている人なんですか?

この物語の最初に出てくる、ある人物から主人公への問いです。

ストーリーパートの中で太字になっているのはおそらくここだけなので、私はこの問いを読者への重要な問いかけだと捉えました。

本書のストーリーの中で主人公がこの問いに対する答えを探していくわけですが、翻って自分はどうか。

本書に刺激を受けて、いろんなことにトライして、うまくいったりいかなかったり、色々あると思います。そんなときに、自分は何をしている人なのか、を常に問い続けたい。問い続けることによって、前に進んで行ける。という気がしています。

まとめ

ソフトウェア開発の現場で働いていて、ちょっとでも何かモヤっとしたものを抱えている人は読んだほうがいいです。

残業が続いていたりして心が荒れたり視野が狭くなってくると、「今時の開発も知らない周りが悪い」「環境が悪い」「会社が悪い」ってなってしまう場合もあるのですが・・・

本書のように「たった一人からはじめ」られることもあります。もちろん本書は物語なので、かならずこのようにうまくいくとは限りませんが、周りのせいにする前に、とりあえず一人からでも何か始めてみたほうが幸せが近づきます。

この本が売れて、たぶん業界が数歩前に進んだんじゃないでしょうか。

カイゼン・ジャーニー たった1人からはじめて、「越境」するチームをつくるまで