『強いチームはオフィスを捨てる: 37シグナルズが考える「働き方革命」』を読みました。

2014年に購入して1回読んでいたのですが、再読です。

強いチームはオフィスを捨てる: 37シグナルズが考える「働き方革命」

ちょうど最初に読んだ2014年というのはだいぶ遠方に通勤しているころで、本の帯にも書いてある

オフィスは非効率、通勤はただの苦痛。

というのに「その通り!」と思って買った記憶があります。

そこから2年以上が経って読み返してみると、ただ「通勤嫌だからリモートがいい」という以上の色々が見えてきました。

本の概要

本書の目的として、最初にこう書かれています。

リモートワークという働き方を、より深く公平に検討する リモートワークに対する考え方をアップデートする

リモートワークに関して、「ウチではムリ」とか「社員がサボるのでは」とかいろんな懸念があったり、逆にいち社員が「いつでもどこでも好きにしていい」とか「自分が楽になる」などと考えてしまうことは多いです。

でもそれだけじゃないんだよと。利点も欠点もあって、その上でこうすると成功しやすいよ、だからリモートワークをしよう!という流れで話が進んでいきます。

こうした誤解・思い違いを無くして「実際のところ」を説明してくれる=考え方をアップデートする、という内容です。

上で挙げたような一面的な見方、勘違いを解くために、この本では従業員としてリモートワークをする側と、リモートワークを導入する会社や上司の側、両面でのコツや考え方が書いてあります。

日本のIT業界からすると「きれいごと」に聞こえるかもしれないが、自分としては「絶対に来る未来」であり「実現するべき未来」だと思っています。

そのときのためにも、この本をキッカケに「もし自分がリモートで働くとしたら」を想像しておくことに意味があると感じました。

もし自分がリモートで働くとしたら、を考える

リモートで働こうと思うと、沢山の準備や注意点があります。

たとえば、本書にかかれているのは

  • コミュニケーションをとる
    • 同じ画面を共有して話す
    • 雑談用のチャットをつくる
    • 年に1回集まる
  • 正しく評価する
    • 印象でなく成果を見る
    • オフィスとリモートで格差が生じないようにする
  • 過ごし方に気をつける
    • 働きすぎない
    • 1日のリズムを作る
    • モチベーションを高く保つ

などなど。

もし自分がリモートワークで働くとしたら、を考えてみると、コミュニケーション等はチャット(テキストもビデオも)でなんとかなりそうですし、たまにどこかに集まるくらいは苦になりません。

評価に関しては会社側が気をつけることなので、こちらは成果をあげることに集中したほうが良さそうです。

あとは自宅やカフェ等の環境ですね。自宅での集中できる環境づくりをしようと思うと、家族の協力も必要になってきます。細かいところだと家事の分担とか「この時間帯は絶対に邪魔しないでほしい」とか。

あとは家族から見たときに、日常に仕事が大きく入り込むように見えるので、そこのメリハリは重要ですね。

こういうところは1回自分で休みの日に「リモートワーカーになったつもり日」を作って動いてみるのが良さそうです。

こうやって妄想するだけなら、カフェでMacBook広げてる自分に酔うのと同じで楽しいのでしょうが、リモートワークはただ楽なもの、というわけではありません。それなりのデメリットもあって、休みを取らずに働きすぎてしまったり、孤独に陥ってしまったり、また仕事の実力が顕になったりもします。本書にはそうしたデメリットが書いてありますが・・・

リモートワークの良い面だけ切り取って広まっている気が

リモートワークというと、最近うわべがもてはやされている気がしています。確かに通勤しなくていい点や、会社支給の大して性能の良くないノートパソコンにストレスを抱えなくて良い点は魅力的です。(会社にあるノートPCのメモリは4GBですが、このブログはメモリ16GBのMacBookProで書いています。ドヤァ)

でも実際はそんな表面的な話ではなくて。

リモートワークの目的は、遠くに住むことじゃない。(中略)リモートワークの目的は、みんながいちばんやりやすいやり方で働くことだ。 – P43

ということは、個人が楽になればいいわけではなく、楽になった分成果を上げなければいけません。「オレが家で働きたいから」だけだと、半分しか満たしていないことになります。ここは意識しないといけないなと感じました。

つまり、**エンジニアの側は自分の能力と生産性を高めないといけない。**という、結局は当たり前に行き着くんですよね。

日本のリモートワーク例

リモートワークのエンジニアがどういった日々を過ごしているのか、はソニックガーデンの伊藤淳一さんのブログgive IT a tryを読んでみると参考になるかと思います。

(いつも楽しく読ませていただいてます。Evernoteに保存した過去記事を繰り返し読むくらいには。)

ソニックガーデンに入社&リモートワークを開始して3年が経ちました – give IT a tryという記事に”リモートワークの良いところ”が挙げられていて、

通勤時間ゼロは素晴らしい。

はまさに、この本の帯と同じですし、また

仕事中でも一時的に家の用事を手伝ったり、子どもの面倒を見たりできる。

も素晴らしいなと思います。

ブログを拝見していて特に思うのが、ワークライフバランスを「ワークをほどほどに抑えつつ」ではなく、高いレベルで両立している、もっとざっくり言うと「家族と幸せな人生をおくっているんだな」ということ。

決して今の自分が仕事のために人生を犠牲にしているわけではないですが、将来子供が産まれたら、いったいどれだけの時間を一緒に過ごせるんだろうか、と不安に思うことはあります。

オフィスにはなくて、家にはあるもの

本書の最後のほうにけっこう重たい一文が書いてあって

死ぬ間際になって「もっと会社にいたかった」という人はいない。一方、「もっと家族と一緒にいればよかった」と後悔する人はけっして少なくない。

その通りだなと思います。

今エンジニアとしてもっと伸びたい、という思いはもちろんありますが、それは「もっと会社にいたい」とイコールではなくて。エンジニアであること、エンジニアとして人の役に立つこと、生活を立てること。これらを家族と過ごす時間と引き換えにする必要はないんですよね。

リモートワークを推奨する本ではあるのですが、単純に「リモートワーク最高」「まだ会社勤めで消耗してるの?」というだけでない、色々考えさせられる本でした。