ジョイ・インク 役職も部署もない全員主役のマネジメント

2018年のJaSST東京で柴田さんの講演にこの本が出てきた記憶があり、柴田さんのいちファンとして購入。

日本で言うところのソニックガーデンさん的位置づけの会社の話かなと思って読みました。実際にはそうだったり、違ったり。

この本に書かれているメンローイノベーションズ社は、ソフトウェア業界の一般とは真逆を行くような会社で、たとえば

ほとんどの会社では、顧客はキュービクルの森をくぐり抜け、プライベートな会議室に通され、ドアが閉じられる。大きな決定は秘密裏に行われる。扉を閉ざした会議室が暗黙に発信するのは、外にいる人は参加する資格がないという強いメッセージだ。また「お前のやっていることは、僕のやっていることほど重要ではない」とも伝えることになる。

とか。

そういったところも含めて会社が話題になり、今では見学者が絶えないそうで、しかもそれを受け入れてオープンに教えてくれるそうです。

本書ではそんなオープンな部分以外にも、

  • ペア作業
  • 採用
  • 仕事の受け方

などについて紹介されていますが、正直かなりボリューミーです。(自分も読むのにしばらくかかりました)

ページをめくるごとに「なるほどー」という思いとともに、やっぱりどこか遠い世界の話のように聞こえてきてしまいます。が、そこで止まってしまっては思考停止。

おそらく著者含め、「俺たちのやりかたが正解だぜ」ということが言いたいのではなくて、「社員が喜びをもって働き、顧客に喜びをあたえていけるような文化を作りたいと思ってやっていった結果、自分たちの場合はこうなったよ」=「君たちの、喜びの文化を、君たちで作り上げろ!」ということを言いたかったんだろうなと理解しました。

自分も、いまの会社の文化を変えようといろいろと動いているところなので、刺激になりました。

その他、個人的に刺さった点の引用として。

恐怖から解放されるためには、安全だと感じられなければいけない。安全だと感じたら実験するようになる。許可を求めなくなる。長くて退屈な会議を避けるようになる。失敗を避けられないものとして受け入れる新しい文化を作るようになる。いまの大きくて遅くて致命的な問題より、小さくて速い問題のほうがよいと学ぶようになる。

ちょっと前から日本でもさかんに言われるようになった「心理的安全性」の話だな、と思って読みました。確かに、チャレンジしての失敗なら受け入れてもらえるという安心感を持って働くと、楽しいし結果にもつながる気がしています。

多くの組織は、変化のために船に火を放つやり方をしている。失敗が許されない巨大な実験に挑戦するのだ。判断が完全に正しければ、ものすごくうまくいく。でも、そうでなかったら大失敗だ。本当に新しいことをやってみるのであれば、小さく始めるしかない。小さければ安価な実験をやる余地があるし、失敗してもそんなに気にやむこともない。

これも心理的安全性につながる話で、やはりチャレンジする余地が必要。

あなた自身が文化を変えるときにも、他の人を巻き込んでエネルギーと興奮に接触させるチャンスはとても重要だ。見逃してはいけない。変化の活動をブラックボックス化してしまい、ステークホルダーの目に触れないように仕事のスタイルや組織を変えようとするチームはたくさん見てきた。こうしたやり方では、率先して活動していた人物がいなくなるとすぐに続かなくなってしまうんだ。

変化は強いるものではなく、巻き込んでいくもの。自分の興奮やらワクワクやらを伝えていくもの。

ソフトウェア業界で自分の身の回りのチームや組織に対してなにか変えていこう、新しいことをやっていこう、という人に読んでほしい本でした。