【読書感想】グラン・ヴァカンス 廃園の天使Ⅰ

『ハローサマー、グッドバイ』という、名作と言われているSF小説があります。
徐々に物語の謎が解けていって、最後に明らかになる真実。とても引き込まれる物語カーブを描く作品です。

この『グラン・ヴァカンス』を読んだのは、友達がTwitterで勧めていたから。それを見て即Kindle版を買ったので、事前にどういった物語なのかを知らず、『ハローサマー、グッドバイ』みたいな雰囲気なのかなと思っていました。

全然違う。

物語の舞台はAIが暮らす仮想空間。そこで世界(空間)自体を揺るがすような大事件が起こる。

誰が何のために起こしたことなのか、そもそもこの空間の真の目的とは何なのか。

物語を読み進めるにつれて、その辺の謎が伏線回収とともに明らかになっていったり、また一部は謎のまま残されたりします。
本の前半2割を読んだ時点で、ハリウッド映画のクライマックスに相当する展開に。

しかも仮想空間内で起こることがとにかく悲惨でグロテスクなことばかりで、ハラハラドキドキワクワクのエンターテイメントというよりは、起こり続ける災害をずっと見せられているような状態。

このお話に出てくる人間は皆作られたAI、ゲームのキャラクターのような存在です。が、その作られた存在であるところのAIの発言や行動を通して、生身の人間の醜さみたいなものがある種生き生きと伝わってくる感覚は、よく晴れた土曜の午後あたりに読むとその日を駄目にしてしまうかもしれないレベル。

どちらかというとエンターテイメント色が強い話が好きな自分なので、面白くてつい読み進めてしまった、わけではありませんでした。むしろ顔をしかめてしまうような展開と、SFがの難しさも相まってなかなかページをめくる手が進まないこともあったのですが、「面白い」ではない何らかの感情に突き動かされて、ゆっくりとでも最後まで読み進めてしまいました。

おそらくこの物語の最後に何らかの救いがある、ということを自分の目で確かめたかったんだろうなと思います。結果はもちろん内緒で。